小説:ボタニカ

牧野富太郎を主人公にした小説です。
維新後からの歴史小説を読んでいるみたいで、よく知らない事件や時代背景が所々あったが、とても興味深く読み終えた。

借金の話が続くと、なんだか気分が下がった。
どうして自分だけ、おいしいもの、上等なものを来たり、食べたり、泊まったりできるのだろう。借金をするという行為に、恥ずかしいという気持ちは起こらないのだろうか。この感覚の違いは、時代の差なのかな?と思ったりした。
私には、牧野の自分勝手な振る舞いが美徳とは思えなかった。

また、牧野は、東京大学とはあまり良い関係ではなかったことがわかった。学歴のない自分に、研究施設の利用を認めてくれたことに感謝はするが、自分の研究室長に敬意を示すとか、秩序に従うことに気を遣わない姿勢が上司からは嫌われてしまったようだ。当人は学問とは関係ないことと思っていたようだ。

事実が分かりにくいところや、植物の名称とその説明とのつながりが読みにくい箇所があった。時事に出てきた言葉「1年志願兵」「博士号授与制度」とか、図書の名前と人名など、時代背景や雰囲気を知らないとよく理解できないところがあった。


淵に望んで魚を羨まんよりは、退いて網を結ぶに如かず
己の存念を果たさんとするものは、そのための努力を惜しむべからず。